ウクライナの世界遺産「タウリカの古代都市ケルソネソスとその領域」

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ウクライナの世界遺産「タウリカの古代都市ケルソネソスとその領域」

黒海に突き出た要衝クリミア半島。その中心都市であるセバストーポリの郊外に、世界遺産の古代遺跡があります。ギリシャ人の植民市として建設されたケルソネソスと、その周辺の農業遺構です。

15世紀に放棄され、以後歴史のなかに埋もれてきたため、「ウクライナのポンペイ」とも呼ばれるケルソネソスの都市遺跡。かつてはウクライナの紙幣のデザインにも使用されたこの世界遺産の見どころについてご紹介しましょう。

目次

ウクライナの世界遺産「タウリカの古代都市ケルソネソスとその領域」

タウリカの古代都市ケルソネソスとその領域とは?

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タウリカとはクリミア半島の古い呼称で、もともと遊牧民族のタウロイ人が住んでいたことにちなんでいます。紀元前8世紀ごろから、ギリシャの諸都市がそれぞれの植民市をクリミア半島に建設するようになりました。ケルソネソスはそうしたギリシャ都市の1つです。

やがて、クリミア半島の植民市はお互いに連携・独立するようになり、紀元前4世紀ごろにはボスボロス王国が成立しました。ボスポロス王国はその後ローマ帝国支配下の属国として存続しますが、ローマが東西に分裂したころには、国家としての活動がほとんどみられなくなります。

ボスポロス王国の都は現在のケルチにあたるパンティカパイオンにありましたが、東ローマ帝国の成立以降はケルソネソスがクリミア半島の拠点となりました。しかし、東ローマ帝国と運命をともにするようにケルソネソスも衰退し、15世紀までには完全に打ち捨てられたと考えられています。

タウリカの古代都市ケルソネソスとその領域へのアクセス

ケルソネソス

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ケルソネソスはセヴァストーポリ市の郊外にあり、セヴァストーポリには空港があります。
セヴァストーポリ市内からケルソネソスまでは、バスかタクシーを利用します。

ケルソネソスのおすすめポイント①:数多くの遺跡が残る古代都市

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「ウクライナのポンペイ」と称される古代都市ケルソネソスには、古代ギリシャからビザンツ帝国時代にかけての遺構が残されています。街路の残る市街地には建物の土台が整然と並び、ギリシャ・ローマらしい円柱も見ることができます。

市街地を囲んでいた城壁も残っていて、古いものでは紀元前5世紀にまで遡ります。街の北側の城壁は黒海の海面上昇や浸食作用の影響でほとんど残存していませんが、南東部は当時の姿を比較的良好にとどめています。ここには世界遺産ケルソネソスの見どころの1つ、市壁に付随する見張り塔のうち最大とされる「ゼノンの塔」がありますよ。

一般の居住地域からはさまざまな時代や職業の住居が出土していて、とくにワイン醸造者の家などは興味深いですよ。発掘調査では、当初は雨水を利用していた給水が、古代ローマ帝国時代に泉から取水する方式に変わるなど、時代による都市構造の変遷のようすも明らかとなりました。

ビザンツ帝国時代のキリスト教建造物群も多く見つかっているケルソネソスでは、10~11世紀に再建されたクルーゼのバシリカや、10世紀に改装されたウヴァロフのバジリカなどがあります。とくに、海辺に佇む「1935年のバシリカ」と呼ばれる6世紀の聖堂跡は、世界遺産ケルソネソス遺跡のシンボルとなっています。

ケルソネソスのおすすめポイント②:農業領域

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世界遺産「タウリカの古代都市ケルソネソスとその領域」の登録英名にある「Chora(ホーラまたはコーラ)」とは、都市国家を囲む農業領域を意味しています。

黒海北岸の古代ギリシア植民都市のうち、三大ギリシャ植民市の1つともいわれるケルソネソスの周辺からは、古代農業史研究にとって重要な農業遺跡が多数見つかっています。植民市建設時に市民に平等に分配された私有地「クレーロス」の区画が明瞭に残っていることから、世界的にも希少な考古学的資料と認識されてきました。

クリミア半島の南西に伸びるへラクレイア半島には、少なくとも128の要塞化された屋敷と、それに付随するクレーロスが残っています。ケルソネソスの農業領域(ホーラ)は、ブドウ園の比率が高いことが特徴といわれています。ただし、ブドウ中心の耕作は2世紀頃までで、その後は牧畜や採石業へと土地利用が転換していったと考えられています。

◎まとめ

世界遺産「タウリカの古代都市ケルソネソスとその領域」のあるクリミア半島は、2014年以降ロシアが占領している状態にあります。日本はロシアの軍事行動による国境変更を認めていないため、現況でこの地域を訪れた場合、在ウクライナ日本大使館等の保護を受けられない状態にあります。

そのため、2018年現在外務省による海外危険情報レベル3が発令されています。状況が改善するまで、この地域への渡航は控えてください。

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