名称:Verla Groundwood and Board Mill
住所:Verlantie 295, Kouvola, Verla 47850
公式・関連サイトURL:http://www.verla.fi/en
世界遺産の「ヴェルラ砕木・板紙工場」は、首都ヘルシンキの北西およそ160キロメートルの静かなヴェルラ村にあります。名称だけ見ると、工場が世界遺産とはこれいかに?と思うかもしれません。ですが、森と泉に囲まれて、静かに眠るレンガ造の美しい建物を実際に目にすれば、ここがただの作業場ではないことはすぐに納得できるでしょう。
ムーミンの故郷フィンランドは、豊富な森林資源に恵まれた国。林業および製材業は、フィンランドの産業の発展に大きく貢献しました。ヴェルラ砕木・板紙工場は建築としてだけでなく、フィンランドの産業史を語る重要な史跡としての価値も認められ、1996年に世界遺産に登録されました。
今回は、フィンランドの隠れた世界遺産「ヴェルラ砕木・板紙工場」をご紹介します。当時この地方で最大級の工場として君臨した歴史的な工場の見どころを体感してください。
目次
職人のこだわりがユネスコを動かした!世界遺産「ヴェルラ砕木・板紙工場」
ヴェルラ砕木・板紙工場とは?
ヴェルラ砕木・板紙工場は、ユネスコ世界遺産の中でも珍しい製材およびパルプの工場です。1885から10年の歳月をかけて、ディッペル兄弟によって建てられました。工場の創業自体は1872年でしたが、1876年の火事でほとんどが焼けてしまい、その後にこの世界遺産の美しい建物が完成したのです。
外観は弟のカール・エドゥアルト・ディッペルがネオゴシック様式で設計。内部は優秀なエンジニアをオーストリアから呼び寄せ、当時最先端といわれた技術で整備されました。最盛期には140人の職工が、伝統的な製法で1日2000トンもの板紙を製造していたんですよ。
兄で株主のフリードリッヒ・ヴィルヘルム・ディッペルが世を去ると、工場の所有者は転々としました。次第に経営は細々としたものになり、1964年に最後の7人の労働者が退職すると、ついに工場は閉鎖。以後は博物館として、第2の人生を歩んでいます。
ヴェルラ砕木・板紙工場へのアクセス
世界遺産のヴェルラ砕木・板紙工場へ行くには、フィンランドの首都ヘルシンキから鉄道に乗り、コウヴォラ(Kouvola)を目指します。コウヴォラからヴェルラまでは、バスで30分ほどです。
また、ヘルシンキからラピンヤルヴィ(Lapinjärvi)かラハティ(Lahti)を経由して、バスでヴェルラに向かうルートもあります。所要時間は2時間15分ほどです。
ヴェルラ砕木・板紙工場のおすすめポイント①:工場博物館
出典: Alexei Kouprianov (CC BY 2.5)
世界遺産のヴェルラ砕木・板紙工場は、工場が停止して8年後の1972年に記念博物館として生まれ変わりました。見学できるのは、1900年初頭に実際に使われていた機械と建物、そして職人たちの歴史に関する展示です。
面白いことに、ここには50年前に実際に働いていた女性の足跡も残されています。お昼休みに鳴らされるベルやカレンダーも当時のまま。この博物館を訪れると、工場が稼働していたころにタイムスリップしたような雰囲気が味わえますよ。
世界遺産に登録されている工場の施設には、名称のもとになっている砕木・板紙工場のほか、板紙乾燥所や砕木・板紙倉庫、製粉工場、工場長宅、木製包装倉庫、円形パビリオン、そして防火設備庫などもあります。緑の水辺にレンガ造の歴史的建造物が点在しているようすは、一見しただけでは工場とは思えないくらい爽やかです。
ヴェルラ砕木・板紙工場のおすすめポイント②:工場内ガイドツアー
世界遺産ヴェルラ砕木・板紙工場では、一般観光客向けのガイドツアーも行われています。自分で見て回るだけでは分からないことをいろいろ教えてもらえるので、ツアーに参加すればより有意義な観光を楽しめます。本工場だけでなく、砕木パルプ工場や木材乾燥場なども見学できます。
川運や馬で材木を運び、工場で製材し、漂白剤につけるといった製造工程の説明は結構楽しいですよ。電気ではなく水で動いていたという木を削る機械も興味をそそられます。職工の宿舎には野菜畑やりんご林などがあり、フィンランドの静かな田舎暮らしのようすを垣間見ることもできます。
世界遺産のなかでも珍しい存在の「ヴェルラの製材・板紙工場」。工場の仕組みや歴史だけでなく、ツアーに参加して当時の労働者の生活を疑似体験してみてはいかがでしょう。
◎まとめ
フィンランドの世界遺産「ヴェルラ砕木・板紙工場」をご紹介しました。フィンランドの産業にかかわる重要な歴史的建造物というだけでなく、森や湖と赤レンガのコントラストが美しい観光スポットでもあります。
ここで働いていた職工が、ユネスコの研究者に「ここはオリジナル100%だ」と言い放ったとされる高いクオリティを誇る古い工場。職人とこだわりが詰まったヴェルラ砕木・板紙工場」で、一味違った世界遺産観光を楽しんでみてください。