世界遺産「トランシルヴァニア地方の要塞聖堂のある村落群」を訪ねる旅!

画像出典:www.istockphoto.com

世界遺産「トランシルヴァニア地方の要塞聖堂のある村落群」を訪ねる旅!

ルーマニア北西部のトランシルヴァニア地方には、要塞化された教会群が300ほどもあったといわれています。当時のトランシルヴァニアは、南のオスマン帝国や東の遊牧系タタール人などの脅威に常にさらされていました。大きな都市は全体を堅固な城壁で囲うだけの財力がありましたが、小さな村はそうはいきません。そこで、村の中心にある教会に、戦時に立てこもれるよう防備を施したのです。

世界遺産には、7つの村が登録されています。そのうち6つはドイツ系移民が築いたもので、残る1つはハンガリー系セーケイ人のものです。いずれも教会を要塞化したというよりは、城塞に礼拝堂が付属しているという方がふさわしいくらい重厚な建物。トランシルヴァニアに新天地を求めた人たちの苦労がしのばれる世界遺産です。

目次

世界遺産「トランシルヴァニア地方の要塞聖堂のある村落群」を訪ねる旅!

目次を閉じる

トランシルヴァニア地方の要塞聖堂のある村落群とは?

出典: www.istockphoto.com

トランシルヴァニアの要塞聖堂の歴史は、12世紀にハンガリー王ゲーザ2世がドイツ系の人々をこの地方に入植させたことに始まります。ゲーザ2世の目的は、ハンガリー本国を外敵が守ることで、それはとりもなおさず入植者も自衛の策を講じなければならないことを意味していました。

シビウやシギショアラのような大きな都市は街全体を城壁で囲いましたが、小都市や村レベルでは、中心にある教会を要塞化し、緊急時にさっと立て籠もるという方策をとりました。実際に、トランシルヴァニア地方は1394〜1690年のおよそ300年の間に、14回もオスマントルコに侵略されています。

世界遺産には、はじめ1993年にビエルタンのみが「ビエルタンとその要塞聖堂」として登録されました。1999年にはクリニク、ドゥルジウ、プレジュメル、サスキズ、ヴァレアヴィイロル、ヴィスクリの6つの村が追加され、現在の登録名となっています。建築様式もロマネスク、ゴシック、ネオゴシック、ルネッサンス、バロック、ロココと入り交じっていて、当時のドイツ系移民の建築技術の高さを物語っています。

トランシルヴァニア地方の要塞聖堂のある村落群へのアクセス

トランシルヴァニア地方の要塞聖堂めぐりの基点となるのは、シビウまたはシギショアラです。シビウには空港があり、フランクフルトやパリ、ウィーンなど主に西欧の海外都市に就航しています。ルーマニアの首都ブカレストとの間には定期便がないので注意してください。

シギショアラへは、ブカレストから鉄道でおよそ5時間。それぞれの都市から要塞聖堂のある村々へは、バスを利用することになります。

ただし、いくつかの村を効率よく回ろうと思ったら、ツアーに参加するかレンタカーを借りる必要があるでしょう。

トランシルヴァニア地方の要塞聖堂のおすすめポイント①:ビエルタン

出典: peruri / PIXTA(ピクスタ)

世界遺産トランシルヴァニア地方の要塞聖堂のある村落群のなかで、最初に登録されたビエルタン。シギショアラとシビウの間にあるごく小さな山間の村ですが、その中央には村の規模とは不釣り合いとも思える重厚な城塞があります。

ビエルタンは、トランシルヴァニアで最初にドイツ系の入植が行われたことから、その後の入植地にさきがけて発展していました。現在の聖堂は15世紀に建てられたもので、それを囲む三重の城壁が武骨で印象的です。

聖堂内にも、「鎖の鍵」やゴシック調の聖壇など見どころがいろいろ!教会と城塞の融合という世界遺産の特徴を、もっとも端的に感じ取ることができます。要塞聖堂めぐりの起点にもおすすめですよ。

トランシルヴァニア地方の要塞聖堂のおすすめポイント➁:プレジュメル

出典: www.istockphoto.com

プレジュメルは、ブカレストから鉄道で約3時間の都市ブラショヴの郊外にあります。「トランシルヴァニア地方の要塞聖堂のある村落群」のなかでは、公共交通機関でもっともアクセスしやすい村の1つです。

この村の要塞聖堂は、教会を囲む防塁が円形をしているのが特徴!14~15世紀の建築とされ、トランシルヴァニア地方の要塞教会のなかで最も重厚といわれています。城壁の高さは12mあり、鉄製の門や跳ね上げ橋も、厚さ3~4mとどっしりしています。たくさんの投石機や大砲を同時に発射させる仕組みの「死のオルガン」や、深い水濠などの防御設備をもち、オスマン軍の攻撃を何度も撃退したそうです。

建築様式もほかのトランシルヴァニア地方の要塞聖堂と異なり、城内には学校や食糧庫もありました。とくに教会の聖壇は、15世紀の貴重な作品となっています。またこの地域で最も古いとされるトリプティカル祭壇画は、キリストの磔刑を描いたもの。パネルの半分以上が金箔で装飾されている力作ですが、作者は不明です。

トランシルヴァニア地方の要塞聖堂のおすすめポイント③:ヴィスクリ

出典: www.istockphoto.com

シギショアラ南東の小村ヴィスクリを見下ろす丘の上には、白壁と赤屋根が印象的な要塞聖堂があります。「白い教会」と呼ばれるほど美しい要塞聖堂ですが、門の厚さは9mもあり、村民が2ヶ月は立て籠もれるだけの備えが常になされるなど、防衛面にもしっかり配慮されています。

13世紀に建てられたもので、教会は小ぶりなものの東側に合唱団用の建物があり、西側には大きな塔も据え付けられています。堂内にはロマネスク様式のアーチや聖壇、彫刻などの美術作品があり、ゴシック様式の外観と異なっているのも特徴です。祭壇は、緑色を帯びた白い石灰岩の半円形をしています。英国のチャールズ皇太子が訪問されたことでも有名な、観光スポットの要塞教会です。

◎まとめ

ほとんどの要塞聖堂は丘の上に建造され、村落自体を防衛施設としています。また、トランシルヴァニア地方に入植したドイツ系移民の建築技術の水準の高さには、目を見張るものがあります。

攻めるに難く守るに易いだけでなく、要塞の外観や教会の装飾など防衛に直接かかわらない部分にも、多大な労力がかけられていることがうかがえます。そうした武骨さと優美さの融合として世界遺産の要塞聖堂を鑑賞すると、よりトランシルヴァニア地方の観光旅行が楽しめるでしょう。

国内のエリア一覧

海外のエリア一覧

カテゴリー一覧

ルーマニアでおすすめの記事

ルーマニアのアクセスランキング