名称:Medieval Monuments in Kosovo
公式・関連サイトURL:http://whc.unesco.org/ja/list/724
バルカン半島中部のコソヴォは、2008年にセルビアから分離・独立を宣言した新しい国。世界の過半数の国から承認されていますが、セルビアをはじめ今なお独立国家として認めていない国も少なからずあります。なによりコソヴォは世界遺産条約を結んでいないので、世界遺産センターではこのコソヴォ唯一の世界遺産「コソヴォの中世建造物群」をセルビアのものとして登録しています。
「コソヴォの中世建造物群」自体は、そうした紛争とは関係のない、中世パレオロゴス朝ルネサンス期の4つの宗教施設。ビザンティン美術の最後の輝きを今に伝えるものとして、貴重な世界遺産です。
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ビザンティン建築の最高傑作!世界遺産「コソヴォの中世建造物群」
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コソヴォの中世建造物群とは
コソヴォの中世建造物群とは、ビザンツ帝国最後の王朝パレオロゴス朝時代に興隆したルネサンスの4つの教会や修道院から成っています。いずれも12~14世紀に建てられたセルビア正教会の宗教施設。ビザンティン様式の建物だけでなく、それぞれが保有する貴重なイコンやフレスコ画などの美術品も合わせて、世界遺産の価値を有するものと認められました。
4つの構成資産は、それぞれ首都プリシュティナ郊外に1つ、西部の中核都市ペーチに2つ、そして南部の都市プリズレンに1つと、コソヴォ国内に分散しています。そのため、4つ全てを1度に見てまわるのはたいへんです。どの都市から訪ねるのか、ぜひこの記事を参考にしてください。
コソヴォの中世建造物群へのアクセス
【デチャニ修道院とペーチ修道院】 コソヴォの首都プリシュティナから西へバスで2時間。ペーヤ(pejë)の町を拠点としてを訪れることができます。町から修道院までは遠いので、タクシーがおすすめ。
【グラチャニツァ修道院】 首都プリシュティナからバスで15分ほどの、グラチャニツァの町にあります。
【聖母リェヴィシャ修道院】 首都プリシュティナからバスで1時間40分ほど南へ下った都市プリズレンにあります。
コソヴォの中世建造物群のおすすめポイント① : デチャニ修道院
世界遺産コソヴォの中世建造物群の1つデチャニ修道院は、バルカン半島に現存する中世の教会のなかでは最大のもの。 14世紀半ばにセルビア王ステファン・ウロシュ3世デチャンスキのために建てられ、王の遺体もここに安置されています。
世界遺産のデチャニ修道院は末期ビザンティン・ロマネスク建築を代表する重要な建物で、ビザンティン様式のドーム、初期ゴシック様式の窓、ロマネスク様式の柱など、ビザンティンと西欧の伝統が融合された建築が評価されています。そして、修道院内部に描かれた1000人を超える聖人のフラスコ画は圧巻!天井から壁までぎっしりと描かれています。
しかし、コソヴォのセルビア系住民はわずか4%足らず。セルビア正教のこの教会は、過去数回手榴弾の投込みやロケット砲の打ち込みに遭っているため、コソヴォ治安維持部隊(KFOR)によって守られています。
コソヴォの中世建造物群のおすすめポイント② : ペーチ修道院
デチャニ修道院の北、ペーチの町はずれにあるのがペーチ修道院です。ここも世界遺産の危機リストに登録されていて、KFORによる警備が行われています。
ここは正式にはペーチ総主教修道院といい、セルビア大主教およびセルビア総主教の主教座にして霊廟となっています。13世紀に作られたドーム型教会が集まっていて、3つの大教会に拝廊、塔などがの建物群が印象的。なかでも聖ニコラス教会は、セルビア正教会で最も重要な教会とされています。この教会は、中世セルビア国王の戴冠式が行われた教会として知られているのです。
ペーチ修道院も、多くのフレスコ画やイコンで内部が見事に飾られています。とくに「生神女就寝祭のイコン」は見応えがりますよ。
コソヴォの中世建造物群のおすすめポイント③ : グラチャニツァ修道院
グラチャニツァ修道院は、首都プリシュティナから5kmほど離れたグラチャニツァ村にある、コソヴォの世界遺産の1つです。1310年に建てられ、14~15世紀にかけて多くの修道士がここで生活をしました。広い敷地に立つこの修道院は、後期ビザンティン建築の最高作品のひとつといわれていて、かまぼこ型の屋根がたくさん重なっているさまはとってもユニーク!聖堂のフレスコ画も必見ですよ。
ただしこの教会も、世界遺産であると同時に危機リスとに登録されていて、他のコソヴォの修道院や教会と同じくコソヴォ紛争時の砲弾の跡が生々しく残っています。
コソヴォの中世建造物群のおすすめポイント④:リェヴィシャの生神女教会
世界遺産の「リェヴィシャの生神女教会」は、コヴォ南部の都市プリズレンに、1306年に建てられた後期ビザンティン建築。オスマン帝国の支配下でモスクに転用されたこともありますが、この地域では唯一今日まで生き残った中世の教会です。
聖堂に描かれた14世紀初頭のフレスコ画は、東方ビザンティンと西方ロマネスクの伝統を融合したパレオロゴス朝ルネサンスのもの。通常中世の教会のフレスコ画というと、キリストや聖者などをわざと非写実的に崩して描いているものがほとんどです。しかし、リェヴィシャの生神女教会のものはルネサンスの影響を受けてとても人間的な風貌をしています。その生き生きとした表情に、コソヴォの芸術水準の高さがうかがえるはずです。
◎まとめ
コソヴォ共和国は2008年にセルビアから独立宣言をしましたが、未だ世界の多くの国がコソヴォを独立国として認めていません。したがって、これらの世界遺産はコソヴォにありながら、セルビアの世界遺産として登録されているのです。
とくに、セルビアより前にコソヴォに入り、そこからセルビアへ移動しようとすると、セルビアのスタンプのない状態での不法入国とみなされてしまう可能性があるので要注意です。コソヴォとセルビアの両方を訪れる場合は、必ず間に第三国をまたぐようにしましょう。