エクアドル - キトについて

キトは、南アメリカ大陸北西部に位置するエクアドル共和国の都市であり、標高3,640mに位置するボリビア他民族共和国の首都「ラパス」に続いて標高2,850mで世界第2位の高地に位置する首都です。キトは、標高が高いだけでなく赤道上に位置することから北半球と南半球を分ける「ミッター・デル・ムンド赤道記念碑」や赤道博物館が世界的なランドマークになっていますが、測量技術の進歩により赤道のズレが発見されたことから、赤道記念碑と新しい赤道博物館が開館しています。都市の起源は、南北965km×東西165kmにわたりアンデス山脈特有の標高の高い平坦な高原地帯アルティプラーノが広がっていることから紀元1千年紀頃の遊牧民の市だとされていますが、15世紀末にはインカ帝国の支配下に入るものの、カニャーリ族の「ラワ・オクリョ」が第10代皇帝の側室になるとともに第11代皇帝「ワイナ・カパック」の母となったことでインカ帝国の第2の首都となります。しかし、この遷都が前首都のクスコ派と新首都のキト派の内乱原因かつ国力低下を招き、1534年にコンキスタドール「フランシスコ・ピサロ」による「サン・フランシスコ・キト」への改称とキリスト教への改宗が強要されました。結果、キトは「イエズス会」や「フランシスコ会」などあらゆるキリスト教の南アメリカ大陸の布教の拠点と重要視され、様々な建築様式の宗教施設が数多く建設されたことで「アメリカ大陸の修道院」と呼ばれました。1978年には、「キトの町並みと歴史的建造物」としてユネスコの世界遺産に登録されている古都であり、ドイツの「アーヘン大聖堂」やエチオピアの「ラリベラ岩窟教会群」など世界初の世界遺産12件の1つです。世界遺産「キトの町並みと歴史建造物」には、「サン・フランシスコ聖堂・修道院」や「サン・ドミンゴ聖堂・修道院」だけでなく、「ラ・メルセー聖堂」や「ラ・コンパーニア聖堂」及び「サン・アグステイン聖堂」など各宗派の宗教施設が構成遺産として登録されていいます。サン・フランシスコ聖堂・修道院は、フランシスコ・ピサロの征服直後の1535年から約10,000坪の敷地で建設が開始された南アメリカ大陸最古の宗教施設であり、ブラッディー・マリーの異名を持つイングランド女王メアリー1世と結婚した事でも知られるフェリペ2世の「エル・エスコリアル修道院」を彷彿させる絢爛豪華さと讃えられている宗教施設です。建築は、フランダース出身のフランシスコ会士「ホドコ・リッケ」がルネサンス様式からバロック様式への過渡期に登場した「マニエリスム様式」を基本に70年かけて建築され、ファサードはサラゴサの聖母が中央に安置されている礼拝堂と同様に左右の2連列柱が印象的かつ重厚なバロック様式も用いられています。ラ・コンパニーア聖堂は、サン・フランシスコ聖堂・修道院の前のサン・フランシスコ広場から北東に2ブロック進んだ十字路にあり、サン・フランシスコ聖堂・修道院の竣工とともにドイツ出身のイエズス会会士レオンハルト・ドイブラーの設計で1605年から建設が開始された宗教施設です。この宗教施設は、サン・フランシスコ聖堂・修道院の建設期間70年の2倍以上の160年以上かかったことからイタリア人のベネッチオ・ガンドロフィットに引き継がれ、黄金時代美術と称されるスペイン・バロック様式と、奥へ進む程絢爛豪華になるイタリア・バロック様式が融合した設計が特徴です。そのため、安山岩を使用した重厚かつ繊細なファサードに対して内部装飾には7,000kgにも及ぶ金箔が惜しげもなく使用されたことから「黄金の聖堂」とも呼ばれ、「奇跡の絵」とも呼ばれる聖マリアーナのイコンと金の棺におさめられた遺骸が安置されています。聖マリアーナは、スペインのトレドから移民してきた地主階級の息女マリアーナ・デ・ヘススのことであり、マリアーナは毎夜神のためにビウエラ・マリアニータを弾き日々祈りを捧げていました。マリアーナは、1645年の大地震に起因する疫病からキトの市民を守るために命を捧げ1645年5月26日金曜日に殉教したとされ、1950年聖人に加えられた女性です。ラ・カテドラルは、独立広場の南西側に隣接している大聖堂であり、独立広場に突き出した扇状の階段を持つ「カロンデレット・アーチ」と深みのある緑色の美しいドームが特徴です。また、大祭壇の後方の「ラ・サバナ・サンタ」はサン・フランシスコ聖堂の十二使徒像を手掛けたネィティブアメリカンの天才彫刻家カスピカラの作品であり、「ラ・サバナ・サンタ」はカスピカラの最高傑作とされています。