ベトナム - ハイフォンについて

ハイフォンは、ハノイやホーチミンと並ぶ中央直轄市に指定されているベトナムの中核都市です。人口は170万人を超え、北部最大の港湾都市としても知られています。

歴史上に姿を現すのは10世紀のことです。古代においては小さな漁村だったものが、10世紀頃から始まった海上貿易によって徐々に発展をしていきました。15世紀には外国船の停泊地としても利用され、兵士の駐屯も始まったことからハイフォン（海防）と呼ばれるようになりました。

1888年の仏領インドシナ植民地政府の下で市に昇格しました。この頃からフランス海軍最大の極東基地として利用がはじまったほか、石炭の輸出港としても発展していきます。

1955年にはフランスの植民地支配が終わるものの、後のベトナム戦争では米軍の猛烈な空襲によって破壊されてしまいます。終戦後に港としての機能を回復し、ベトナム有数の工業都市として再建されました。今ではベトナムで最初の輸出加工区として認可され、香港からの投資によって輸出基地としての発展を続けています。

ハイフォンは漁場として国内4番目の規模を持つほか、米の重要生産地としての顔を合わせ持ちます。工業でもハノイに迫る経済規模を誇り、2013年には信越化学工業のレアアース精製工場が稼働を開始しました。

ハイフォンはベトナムでも北部に位置しており、日本の沖縄のような亜熱帯気候に属しています。高温多湿な夏と乾いた冬の2つに大きく分類されるのが特徴です。ただし熱帯との境目に近いため、夏と冬の温度差が沖縄よりも顕著になります。4～10月の降水量が多く、年間降水量の90％がこの時期に降ることで残りの季節は乾燥します。

ベトナム北部の中心都市として知られるハイフォンの魅力的な観光スポットをいくつか紹介していきます。

・ハイフォン市民劇場
市内の観光名所であり、建物の中心にホーチミン主席の肖像画が飾られています。外観のみの見学となりますが周辺が整備されているため観光しやすく、夜はライトアップされているために日中以外も楽しめます。市民の憩いの場としても活用されています。

・グエンドゥフラワーガーデン
もともとは兵士がトランペットの練習をするために作られた公園で、20世紀初頭にフランス人によって建設されました。今では文化的活動や音楽イベントの場として利用されています。園内はヤシの木の並木道など整備された空間が多く、多くの市民が訪れます。

・ハイフォン教区の大聖堂
1960年に設立されたローマカトリックの大聖堂です。フランスの植民地であった関係から、ベトナムでは今でもキリスト教徒が多い国の1つです。日曜日には1日3階のミサが行われ、静かな雰囲気に包まれます。一般人の見学も可能です。

・海軍博物館
カウラウバスターミナルに近く、旅行者が気軽に立ち寄れる施設です。まるで大型船のように見える外観が特徴的で、ベトナム戦争を始めとした数多くの資料が展示されています。近くにはラオ橋と川があり、散策にも利用できるスポットです。

・ル・チャン将軍像
タムバック湖のすぐ近くに建設されたモニュメント像です。西暦43年まで生きた女性将軍で、現在のハイフォンの基礎を作った人物として知られています。地元民からは英雄として崇められており、ル・チャンという名前は市内地区の名前にも起用されています。

・ハイニンパゴダ
市内のアンハイ地区にある寺院です。1933年にドンティエン評議会議長が現在の場所に建築したことから、ドンティエンパゴダとも呼ばれます。東南アジアにありながら中国風の寺院であり、日本の寺院にも似ている様式です。

・タムバック川
美しい景観で知られる市内を流れる川です。川沿いの「タムバック通り」の歴史はフランス植民地時代にさかのぼります。19世紀にフランスのビジネスマンが流入した際に街の外観が形成されました。貨物船も通る水上交通の要所でありながら、市民が休日を過ごすスポットとしても知られています。

・タムバック湖
市内の中心駅から車で15分とアクセスが良好な湖です。遊歩道は1kmに渡って美しく整備されており、ジョギングしたり散策したりと市民の憩いの場として知られています。筋肉トレーニング用の器具が設置されている場所もあり、気軽に立ち寄って汗を流すこともできます。タムバック湖周辺にはフランス植民地時代の建物が多く残っており、観光スポットとしても注目を集めています。

ハイフォンの治安は、首都であるハノイや最大都市のホーチミンと比べると良好です。詐欺師が街を歩いていることも少なく、地元民は親切に接してくれます。ただし、スリや置き引き対策といった海外における基本的な防衛策は講じておくようにしてください。