タイ - ウボンラーチャターニーについて

ウボンラーチャターニーはタイの東北部に位置する都市で、隣国のカンボジア・ラオスとの国境を有している場所です。都市面積は1万6,000平方km・人口は180万人で首都バンコクに次いで国内第2位の人口を有しています。ウボンラーチャターニーの歴史は古く、紀元前2世紀頃に先住民のマニ族が治めていた都市でした。都市名のウボンラーチャターニーとはマニ族の言葉で「聖なる森林」という意味になっています。その後、メコン川の河口流域で発展したメソポタミア文明のクメール王朝の領土となり、500年頃になるとアユタヤ王朝に組み込まれました。1780年になるとチャクリー王朝(現タイ国)が生まれて、初代国王・ラーマ1世はウボンラーチャターニーを首都に命じました。第二次世界大戦時は旧日本軍の植民地となるタイですが、終戦後に国連常任理事会議でタイの独立が決まり、ウボンラーチャターニーは首都から国内東部を管轄する県庁へと変更されました。ウボンラーチャターニーはコーラート台地にある都市で、標高120m地点になります。周辺は森林に囲まれ、亜熱帯性気候に属していますが、標高が高い影響で年の平均気温は約25度と比較的過ごしやすい気候なのが特徴です。5月から8月は雨季で降水量が多くなり、内陸でありながらも水源に恵まれています。ウボンラーチャターニーの主要産業は豊かな水を利用した稲作で、国内でもっとも米農家が多い地域です。収穫される米はタイだけでなくインド、マレーシア、シンガポールにも輸出されていて大きな経済効果を得られる産業になっています。ウボンラーチャターニーの主なランドマークは、「ターンスム駅」「タムボム遺跡」「シリントーンスタジアム」「ムーリンチャムナープ寺院」の4か所です。「ターンスム駅」はタイ国有鉄道東北線の駅で、駅舎は1920年に建設されました。国有鉄道を敷設したのは旧日本軍で、駅舎の建設も旧日本陸軍の指揮下のもとでおこなわれたものです。そのため、現在も「ターンスム駅」の正面玄関の上部で日章旗の彫刻を見ることができます。空港や港がないウボンラーチャターニーにとってここが玄関口となっており、市民だけでなく観光客も大勢利用しています。バンコクに向かう特急のほか、ラオス、カンボジアに向かう国境を越える鉄道に乗車することも可能です。「タムボム遺跡」は1994年に世界文化遺産登録がなされた、クメール王朝時代に築かれた石造りの住居跡と壁画が残されています。紀元前5世紀頃の古い遺跡はタイ国内ではここしかなく、発掘されるまではクメール王朝は伝説上の幻の国となされていました。ところがこの「タムボム遺跡」から出土したパピルス(聖典)の一部や、青銅器に刻まれた文様がクメール王朝の証であることがわかり、世界の歴史上でも非常に重要な遺跡として扱われています。一般人の立ち入りは許可されていませんが、隣接している資料館で出土品や遺跡の概要資料を見ることができます。「シリントーンスタジアム」はイーサン・ユナイテッドFCのホームスタジアムで、1996年に建設されました。国内サッカーリーグの強豪チームであるイーサン・ユナイテッドFCのホームゲームがある時は、国内から数多くのファンが集って盛り上がりを見せているスタジアムです。タイでは珍しい全天候型のドーム付きスタジアムで、サッカー以外にもコンサートや記念式典など多目的用途に使われているところです。近代的な建物であるため、ウボンラーチャターニーの新しいランドマークとして定着しているほどです。「ムーリンチャムナープ寺院」はアユタヤ王朝時代に建設された寺院で、内部には全長8mの巨大な涅槃仏（ねはんぶつ）が安置されています。現在はタイ・ヒンドゥー教の聖地になっているため、毎年4月になると各地から巡礼者がたくさん訪れます。市の中心部にあり、大きな金色の屋根が一際目立つ建物で、ウボンラーチャターニーの象徴的な存在です。普段は一般人や観光客が自由に見学することができますが、4月の釈迦生誕祭の時は巡礼者しか立ち入れません。ウボンラーチャターニーで宿泊するのにおすすめの場所は、ムアン地域です。この地域は街の中心部であり、観光客向けのホテルが点在しています。ムアンにある「ターンスム駅」を利用して特急に乗れば、バンコクまで約1時間30分で向かえるので、観光拠点にするにも利便性に長けているといえます。