ロシア - カザンについて

カザンはロシア連邦内タタールスタン共和国の首都です。ロシアの中でもヨーロッパ寄りの地域に位置しています。ヴォルガ川・カザンカ川の二つが合流する場所に面した水の国で、古くから水陸両方の交通・交易の拠点として栄えました。現在は機械工業や石油化学工業をはじめとした様々な工業が盛んな街です。タタール人が多く公用語はタタール語ですが、ロシア人口も多いためロシア語も用いられます。

元はこの土地をカザン・ハン国が支配していましたが、16世紀にイヴァン雷帝の侵攻によって街の大部分が破壊され、それ以降はロシアの征服下に入りました。その後起こったプガチョフの乱やソ連時代も含め、街は何度も破壊を受けその度に再建を繰り返し変化してきました。特にソ連崩壊以降は大規模な改築や建設がいくつも行われ、街並みは大きな発展を遂げました。タタール文化とロシア文化、イスラム教とロシア正教、歴史あるものと新しいものが融合した独特な雰囲気を持つ街です。

冬が長く、夏が短い気候です。特に11～3月は平均気温がマイナスに陥る場合が多く、夏には最高気温が30度を超える日もあるなど寒暖差が激しいです。ランドマークとしてはトルストイやレーニンといったロシア史に残る著名な人物を多数輩出したカザン大学、世界遺産にも登録されているカザン・クレムリンが挙げられます。その他の名所もいくつかご紹介します。

・カザン・クレムリン
カザン・クレムリンは2000年に世界遺産に登録された建築物群です。クレムリンは城塞を意味します。カザンを訪れた際に訪れておきたい多くの建築物がここに集結しています。16世紀のイヴァン雷帝の侵攻により破壊の憂き目にあい、現在建っているものはスュユンビケ塔を除いて再建や改築されたものです。周辺は花壇や広場も広がっています。ロシア正教の教会やイスラム教のモスクが同じ場所に建っていることからも有名な観光スポットです。

・ブラゴヴェシェンスキー大聖堂
白い外壁に青い玉葱型の屋根が特徴的な、高貴な雰囲気の漂う大聖堂です。クレムリン内の建築物でも最古のものと思われますが、イヴァン雷帝によって改築され、ソビエト時代に破壊されています。現在建っているものはソ連崩壊の後建て直されたものです。

・スュユンビケ塔
スュユンビケ塔はクレムリンの南端に位置する建築物です。この塔から身投げしたというスュユンビケ王妃にちなんで名づけられたとされています。高さは50mを超える斜塔となっており、南側からの出入り口として利用されています。その成立時期や経緯には諸説囁かれており、多くの謎を秘めた斜塔です。

・クルシャーリフ・モスク
イヴァン雷帝によって征服される前のカザン・ハン国が建てた、イスラム教のモスクです。元は16世紀に建築されたものですがその後の侵攻により破壊され、現在建っているものは2005年に再建されたものです。モスクの建築的特徴の中にロシア建築の特徴も見いだせる独特な作りとなっています。白を基調とした壁に鮮やかな青の屋根、四方に塔が伸びている美しい建築物です。

・バウマン通り
バウマン通りはメイン通りです。革命家ニコライ・バウマンにちなんで名づけられました。広々とした石畳の道で、飲食や買い物を楽しむことができます。常に地元の人々や観光客で賑わっており、時には路上ライブも行われます。精力的かつ幻想的な雰囲気の街並みを歩き、現地の空気に触れてみるのも良いでしょう。

・全宗教の寺院
全宗教の寺院はスタロイアラッキノ地区にある非常に華美な建築物です。基本は石造りですが黄色や水色、緑色などの様々な色を用いて塗装されており、屋根や壁には多彩で細やかな柄が描かれています。この建物は地元出身の芸術家が1992年より製作しているもので、今なお未完の状態であるようです。全宗教の寺院という名の通り、この建築物には様々な宗教の建築的特徴が盛り込まれています。見る角度によってはテーマパークと勘違いしてしまうほどのそのポップで華やかな色彩は、人々に不思議な高揚感や畏敬の念を与えてくれます。観光客が非常に多く、賑やかな場所です。

比較的穏やかで治安の良い地域です。観光業にも力を入れているため、英語の案内があり英語が通じる場所も多いため観光には便利に感じる場面も多いでしょう。ホテルを選ぶ際はカザンカ川沿いのエリアがおすすめです。程良く栄えており、カザン・クレムリンなどの観光スポットにもアクセスしやすくなっています。