イラク - バスラについて

バスラはイラク南端の街で、首都バグダッドに次ぐ大きな都市となっています。北部のトルコから流れるチグリス川と、その下部をシリアからペルシャ湾に向かって流れるユーフラテス川が合流した先にある街バスラはイランにも近く、川沿いの他都市と同様に重要な港湾都市の一つです。石油を運ぶパイプラインのターミナルがあり、石油製品が積み出されることからもイラクの重要な経済都市です。過去の世界大戦中にはイギリスの補給基地として使われていたことからも国内の重要拠点であることが分かります。しかし一方、隣国との紛争でも爆撃を受けるなど、石油が絡むゆえの惨事にも見舞われることが多く、そうした歴史から名を知られることも多いかもしれません。
バスラは、首都バグダッドからは500km以上も離れていますが、南部に隣接するクウェートにはとても近く、首都クウェートシティーまでは200km以下の距離です。陸路であれば、2時間ほどで行ける隣国都市の方が行きやすい立地となっています。
イラク全体は砂漠気候ですが、バスラはペルシャ湾に近く、低温となる冬場には雨が降ることもあり、日本の秋冬にあたるシーズンには気温が20度前後と過ごしやすくなります。しかし、春には既に30度に達する気温が徐々に40度へと上がり、真夏には40度後半を記録することもあり、屋内でもエアコン無しで過ごすことはやはり無理です。日中と違って朝晩には10度以上も温度は下がりますが、熱風が吹きつけるような暑さは日本人にとって息苦しく感じられるほどです。一方の冬場には、雨が降るのはわずか数日ながら乾いた大地を潤しオアシスに緑をもたらします。バスラではナツメヤシをはじめ米や麦などの農産物が生産されているのですが、砂漠のイメージとは異なるこうした一面が見られるのはこの雨のおかげです。
バスラのランドマークといえば、目新しさからしてバスラ・タイムズスクエアでしょう。石油産業では名を馳せてはいますが、カフェやレストランなどが集まった商業施設は少ないです。そのため、モダンな都市ならどこにでもありそうなショッピングモールの存在は大きなものがあります。そこは一家総出でやってくるようなお出かけスポットなのです。地元の人々にとってはウィンドーショッピングだけでもウキウキするような場所で、映画館やボウリング、子どものプレイエリアからスケートまでできる大型エンターテイメントパークとしても賑わっています。
イスラムの街らしく、市内に点在するモスクもまた暮らしの中のランドマークです。正式にはイマン・アリ・モスク、通称オールドモスクは、イラク国内に1万以上もあるモスクの中でも最古とされる歴史的建造物でもあります。635年に発見されたとされるこのモスクは、元々ナツメヤシの幹を使って建てられていましたが、火災や水害により何度となく再建され、残念ながら元の姿を見ることはできません。きらびやかでエキゾチックな近代的モスクとは異なり、残された塔の一部分が崩れており、寂しい光景ではありますが、ここには新しいモスクが建設される計画があります。
災害や紛争など様々な経緯からめぼしいランドマークは多くはありませんが、国内にはスポーツ愛好家が多く、市民が誇る近代的なスポーツスタジアムがあるのです。ここはなんと6万人以上を収容できる大型施設で、国内プレミアムリーグのチームであるナフト・アル・ジャヌーブとアル・ミーナーがこのスタジアムをホームグラウンドとしています。
観光で訪れる名所が結集したエリアではありませんが、川沿いでもあるアシャール地区あたりは落ち着けるホテルもありますし、レストランや買い物などがひと通りできるエリアです。学校や病院、銀行などが集まり、普段から地元の人々が多く集うエリアなので安心感があります。土地柄からして街歩きを楽しむような場所ではありませんが、この辺りからであれば、ショッピングモールも近く、街の様子を見るだけでも良いでしょう。
また、観光中にサッカーの試合があれば、スポーツシティースタジアムはぜひおすすめの地域に入れておきたいところです。観光中には地元の人々との接点はそれほど多くはありませんが、サッカーの試合となればまた別物です。熱狂的な地元のファンとは会話がなくても意気揚々とした雰囲気を共有できますし、スポーツを通してお互いに親近感を持つことのできる貴重な場所であることが分かります。