ギリシャ - キオス島について

キオス島は、エーゲ海の東に浮かぶギリシャの島です。東隣にトルコのイズメル県があり、北にはギリシャ領のレスボス島が位置しています。西洋文学の初期作品であるイーリオスとオデュッセイアの原作者と考えられているホメロス（紀元前8世紀）の出身地ともされるなど、その名は古代から有名です。古典音でキオスと表示されますが、ギリシャではヒオス島と呼ばれています。キオス島の面積は約842平方キロメートルで、新潟県の佐渡ヶ島とほぼ同じ面積を持つ、ギリシャで5番目に大きな島です。西にあるプサラと東のイヌセスの小島をあわせてキオス県を構成しており、キオス島全体がキオス市になっています。島の人口は約5万2000人、主な産業はオリーブやイチジクなどの農産業であり、ぶどうを用いたワインも製造されているのが特徴です。世界で唯一、キオス市でしか生産できないマスティック・ガムがあり、現地では「キリストの涙」という呼び名の方が有名でしょう。キオス島は、地中海性気候の影響が顕著な地域です。夏は暑くよく晴れ乾燥しており、雨季の11月から3月までは穏やかな雨が降ります。日本と同じく四季があり、1年で最も寒い季節の温度は10度前後、暑い季節になると27度前後になるのが特徴です。地中海性気候の影響から島の大部分が半乾燥地帯になっています。自然や海を楽しみ見たいなら6月から9月、島内の遺跡を訪れる場合は4月から5月がおすすめでしょう。そしてランドマークとして親しまれているのが、キオス城です。キオス市内にある城は、キオス港をぐるりと取り囲むように城壁が残されています。この城は10世紀頃にピザンティン帝国により建設された、石壁に囲まれた要塞でした。現在では城塞の内側は住宅地や広場となっており、ピザンティン様式のセントジョージ教会やトルコ式バス、カフェやギャラリーなどが集まっている魅力的な場所です。中世建築と相まった独特の雰囲気が魅力的な場所です。キオス島中央部にあるアナヴァトス村は、難攻不落を誇る天空の砦とも呼ばれています。南北を崖に囲まれているため、攻めがたく守りやすいという特徴を活かして築かれた砦です。村中心部に集中するように建築物が立ち並んでいますが、1881年3月に発生した大地震により島中央部が大打撃を受けたため、無人となった時期もありました。現在は僅かな住民が生活しており、崖からの眺望を見ようと多くの観光客が訪れる人気スポットになっています。ヴォナキ広場の近くにあるビザンティン博物館では、島の歴史を学ぶことができるでしょう。1980年に建設された博物館には、初期のキリスト教やピザンティン時代から中世イタリアの都市国家ジェノバ統治時代やオスマン帝国時代の彫刻や碑文、陶器やフレスコ画などが多数展示されており、島の歴史を学べるスポットとして好評です。キオス島には、歴史遺跡に加えて中世の面影を感じられる町並みや建築物が多数あります。特に有名なのがネアモニ修道院です。11世紀に建造された歴史遺産でもある修道院は八角形のピザンティン様式と美しいモザイクが当時のまま残っており、長い歴史を感じさせます。修道院へ向かうには、中心都市ヒオスからタクシーで山へ移動しなければなりませんが、教会内中央聖堂にある脚を洗うキリストや貼付けされたキリストなどのモザイク画やフレスコ画といった貴重な遺産は必見です。ピルギ村も人気の観光地です。人口800人ほどの小さな村にある建物の外壁には、幾何学模様柄があしらわれており、貴重な模様を目当てに観光客が訪れています。地元ではクシスタ呼ばれている外壁模様は、ピルギだけのもので村を一歩出ると見かけることはありません。中心広場だけでなく路地にも独特の模様が描かれており、ここでしか見られない光景と言えるでしょう。ピルギ村が誇るのが、マスティック（マスティハ）です。村を中心に周辺の村々がマスティックの生産共同体を形成しており、周囲の人々の生活の糧となっています。マスティックはウルシ科の樹木で、古代から薬として重宝されてきました。現在では科学的に証明された抗酸化・抗菌作用を生かした化粧品、ガムやハーブティーなどの食品化がされており、現地で購入できる人気のお土産です。キオスの北にあるヴロンダトスでは、復活祭になると2つの教会の間でロケットを打ち合う祭りがあります。現地ではロケット戦争とも呼ばれており、聖マルコ教会とパナギア・エリツィアー二協会の間で、互いの教会に設置されている鐘楼を狙って互いにロケット花火を撃ち合うのです。一晩で6万5000発も飛び交うロケット花火は、まさに壮観でしょう。かつて島を占領したオスマン帝国に対抗して大砲の代わりに花火で立ち向かったことが祭りの由来とされており、この祭りを見るために復活祭シーズンには多くの観光客が訪れます。