エジプト - アスワンについて

アスワンはエジプトの南部に位置するヌビア地方の都市の1つで、アスワン県の県都でもあります。世界で最も乾燥した居住地で、夏は非常に厳しい暑さに見舞われます。気温は40度を越えることも多く、年間を通して強い陽ざしが降り注ぐのです。ただし、冬になると夜や明け方には冷え込むこともあります。アスワンは古代エジプト時代には南にある辺境地でした。スウェネトと呼ばれる古代都市で、スウェネトには「交易」という意味があります。アスワンを代表する観光スポットには、アスワン・ハイ・ダムやフィラエ神殿、カラブシャ神殿、ヌビア博物館、切りかけのオベリスク、エレファンティネ島等があります。アスワン・ハイ・ダムはナイル川に建設されたダムで、エジプト国家の一大プロジェクトとして造られました。その目的は、ナイル川の氾濫を防止するためと灌漑用水を確保するためです。当時のエジプトの大統領であったガマール・アブドゥル・ナセルが、ソビエト社会主義共和国の協力を得てダムの建設を計画しました。アスワン・ハイ・ダムは1970年に完成し、それまで毎年のように起こっていたナイル川の氾濫を防ぐことができたのです。アスワン・ハイ・ダムの周辺には貴重な遺跡が多数あり、アスワン・ハイ・ダムと併せて観光スポットになっています。フィラエ神殿はヌビア遺跡の1つで、「アブ・シンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群」として1979年にユネスコの世界遺産に登録されました。フィラエ神殿は、女神イシスを祀っている神殿です。イシスはエジプト神話に登場する女神で、豊かなナイルの土壌を表す豊穣の女神として知られています。現存する神殿は、プトレマイオス朝時代に建設されたと言われています。その後、ローマ時代にわたって増築が行われました。元々はフィラエ島にありましたが、アスワン・ハイ・ダムの建設によって水没することになったので、現在の場所に移築して保存されることになったのです。古代エジプトの遥かな歴史を感じることができるので、アスワンを訪れた際にはぜひ観光に訪れたいスポットといえます。ヌビア博物館は、ヌビア文化や文明の発展を学ぶことができるところです。敷地面積は50,000平方メートルもあり、その大半が歴史的な作品で占められています。様々な年代を象徴する遺物の断片も3,000点ほどあり、地質学やファラオ、古代ローマ、イスラームに関するものがあります。切りかけのオベリスクは、古代エジプト時代の北採石場に残されている巨大なオベリスクです。オベリスクとは神殿などに立てられるモニュメントのようなものでした。そのオベリスクが加工途中の状態で見つかっています。おそらく石材から抜き出す作業の際に、ひび割れが生じたので切り出すことを中止したと考えられます。切りかけのオベリスクは本来、カルナック神殿のオベリスクと補うために作られようとしていたものです。それは第18王朝の5代目ファラオであったハトシェプスト女王の命令によるものと考えられています。完成することはありませんでしたが、それが当時の石工技術を今に伝えることになりました。切削途中のオベリスクも貴重なので、エジプト政府によって遺跡として保護されています。エレファンティネ島はナイル川の中にある島で、アスワンの対岸にあります。エレファンティネ島は観光が盛んで、多くの観光客が訪れるのです。ファッルーカと呼ばれる小型船に乗ってナイル川を渡河して行くことができます。エレファンティネ島の歴史は非常に古く、古代エジプトの古王国時代には既に存在していました。エレファンティネ島の南部には、紀元前4000年前からスントと呼ばれる城が築かれていたと言われています。第11王朝と第12王朝のレリーフが残されており、当時の様子や歴史を知る貴重な資料でもあります。エレファンティネ島で人気の観光スポットは、クヌム神殿遺跡やナイロメーターの遺跡などです。これらの遺跡は、新王国時代に建てられました。クヌムは古代エジプトから伝えられている創造神の一人で、ナイル川を司る神として知られます。ナイロメーターは、ナイル川の透明さを測ったり、ナイル川の水位を測定するための建築物でした。当時、ナイル川の洪水の規模を予想することは非常に重要だったと考えられます。それからアスワンは、近郊の都市にあるアブ・シンベルへの観光拠点としても利用されています。