クロアチア - スプリトについて

スプリトはクロアチア南部のアドリア海に面している街で、クロアチア国内ではザグレブに次いで2番めに大きな都市です。ダルマチア地域の交通の要衝で、旧ローマ時代からの複雑な歴史を辿ったスプリトとその周辺には人気の高い観光地が多く、旧市街地は世界遺産にも登録されています。街の南側アドリア海の対岸には、景観の美しいブラチ島やショルタ島が浮かび、観光スポットには事欠かないクロアチア随一の地域です。元々はギリシャのアスパーラトス植民地があった場所ですが、古代ローマ時代のディオクレティアヌス帝が、3世紀末から4世紀にかけてディオクレティアヌス宮殿を造り、スプリトはその本拠地でした。東ローマ帝国が弱体化すると周辺各国の影響を受けるようになり、中世の頃にはクロアチア人が勢力を伸ばし始め、その影響下となります。クロアチアの勢力が弱まった10世紀頃、一時的にヴェネツィア共和国の支配下となったこともあり、その後も支配者が何度も変わったことが、様々な文化が流入する原因ともなりました。19世紀初頭にはナポレオン勢力下に置かれたこともあるほか、オーストリア帝国の一部だった時代もありますが、第一次世界大戦でオーストリアハンガリー帝国が敗戦国となった影響で、ユーゴスラビア王国の要所と位置づけられます。第2次世界大戦中はイタリアやドイツの支配下に置かれたものの、終戦後ようやくユーゴスラビアを形成するクロアチアの管理に戻ったことで、スプリトは急激に発展を遂げました。1991年のクロアチア独立時は一時的に景気が後退しましたが、21世紀に入ると再び活気を取り戻し、観光地としての開発や経済的な成長も見られる地域です。時代の波にのまれ頻繁に支配者が変わったことは悲劇的ですが、各国の最先端の技術や多様な文化を吸収しつつ発展を遂げたため、他には無い独自の文化圏を形成できたという大きなメリットもあり、それが現在のスプリトの姿に繋がっています。地中海性気候に分類されるスプリトは一年を通して温暖な気候で、乾季の6月から9月にかけては平均最高気温が25度を超えると共に雨は少なめですが、日によっては40度以上になることもあります。12月から2月にかけては平均最高気温が10度前後まで下がるものの、地中海沿岸部らしくそれほど厳しい寒さにはなりません。街の南西部にあるディオクレティアヌス宮殿は、スプリト市内でも有名かつ人気の観光スポットです。宮殿を建設した皇帝が亡くなったことや帝国の衰退により、宮殿は一時的に廃墟と化しましたが、移り住んできた人々によって再建され、時代とともに少しずつ様変わりしてきました。格式が高いだけでなく庶民にも親しまれ、現在も多くの人が住んでいる現在進行系の宮殿です。宮殿の中心部にはペリスティルと呼ばれる中庭があり、その東側には皇帝の霊廟だった八角形の大聖堂があります。大聖堂の中には様々な時代に造られた貴重な物が多く、たとえば入り口扉は13世紀のもので、聖堂内部にある独特な彫刻が施されたロマネスクの説教壇は14世紀頃に造られました。聖ドムニウスの祭壇は15世紀と18世紀に造られた二つのものが存在し、それぞれ特徴的で趣があります。この他にも洗礼室や市立博物館など、宮殿の城壁内には様々な施設があり見どころは満載です。ディオクレティアヌス宮殿の北側、ストロスマエロフ公園の敷地内にはグルグールの象が佇みます。モデルとなったグルグール司教は、10世紀頃のクロアチアの英雄の一人で、スラヴ語の保護に務めました。幸運が訪れるという迷信があり、左足の親指に触れる市民や観光客が跡を絶ちません。これらを含めたスプリトの旧市街地は、古代ローマ時代の遺跡の上に時代ごとに建物が造られてきました。ローマ建築に限らずロマネスク様式やルネッサンス様式など、様々な建築様式が折り混ざり「生きた遺跡」となっています。更にスプリトの北方5kmのあたりには、古代ローマ都市「サロナの遺跡」もあり、観光客にとっては時間の足りない地域です。スプリトは比較的コンパクトに収まっている街ですから、宿泊場所を探す際に苦労はしませんが、観光のしやすさという点で旧市街地がおすすめです。中でもペリスティル広場やディオクレティアヌス宮殿周辺は、有名なホテルも多く選択肢の一つとなります。このほか旧市街地南東方面のバチュヴィツェ地区も、ホテルが建ち並ぶおすすめの地域です。