アゼルバイジャン - バクーについて

バクーはアゼルバイジャン共和国の首都です。日本ではあまり知られていないのですが、歴史遺産の多く残る旧市街と、近代的な都市の共存する、魅力的な都市です。地理的理由から歴史に翻弄され、多様な文化の影響から独自の文化を育んだ旧市街は、世界遺産に登録されています。こちらでは、そんな多様な文化が凝縮された歴史都市の魅力に迫ります。この町はアゼルバイジャン共和国のカスピ海西岸のシェロン半島の南側のバクー湾に面した港町で、アゼルバイジャン最大の都市です。11の行政区、48の町区に分割されていて、2百万人を超える人々が暮らしています。帝政ロシア時代から石油の生産地として発展しており、現在でも大規模な油田があるためアゼルバイジャンだけでなく、南カフカース地域の中でも有数の大都市として知られています。地理的な要因から交易都市としての歴史も長く、様々な民族・文化の影響を受けながら独自の文化を育んできました。現在、バクーの人口の9割はアゼルバイジャン人が占めていますが、ソ連時代にはアルメニア人、ロシア人、ユダヤ人などの居住する多民族都市でした。ソ連時代にはシナゴーグが全て破壊されてしまいましたが、今日、人口のほとんどはイスラム教徒であるイスラム都市となっています。気候は温暖で、冬場でもマイナスになることはまずなく、夏場も7月の平均最高気温が31度と、日本よりも過ごしやすい気候です。晴れの日が多く空気が乾燥しているので、過ごしやすい日が多いのですが、時折強風が吹き荒れることがあります。実は、この強風がペルシア語の「バード・クーベ（風が吹きつけた）」が、現在の「バクー」という土地の名前の由来となったとも言われています。この町の最大の特徴は、城塞都市であることです。なかでも世界遺産保護区に指定されているバクー城壁地区には、ゾロアスター教、サーサーン朝、アラブ、ペルシア、シルヴァン朝、オスマン帝国、ロシアの文化の影響を受けた、非常に貴重な歴史的都市景観と建築物が見られます。アゼルバイジャンの中でも国際都市として栄えたバクーの歴史が凝縮された場所で、世界的にも貴重な例です。バクーを観光するなら、バクー城壁地区、シルヴァン・シャー宮殿、乙女の塔に行ってみましょう。これらはいずれも世界遺産保護区域に指定されている史跡です。旧市街は「イチェリ・シェヘル（内城）」と呼ばれ、城壁で取り囲まれています。城壁内は、干しレンガ造りの建物や、入り組んだ路地などの中世の街並みが残る場所です。シルヴァン・シャー宮殿や乙女の塔、ムハンマド・モスクなどは全てこの城壁内にあります。シルヴァン・シャー宮殿は、15世紀に建造された宮殿で、アゼルバイジャン初の世界遺産です。16世紀までバクーを支配していたシルヴァン・シャー朝の王宮として建てられました。宮殿内には、霊廟、謁見の間、ハーレム、ハマム（浴場）、モスクがあり、当時の栄華の面影を残しています。宮殿の一部は博物館となっていて見学が可能です。乙女の塔は11世紀に建てられた28メートルの高さの塔で、内部はバクーの歴史博物館となっています。崖の上に建てられたこの塔は、アゼルバイジャンの言葉で「グズ・ガラスゥ」と呼ばれているのですが、トルコ語圏では割と一般的な名前だと言われています。そのため「この地が一度も占拠されたことがない」という意味で、名付けられたのだと考えられています。現在の塔は12世紀に建て直されたもので、望まない結婚を強要された女性がこの塔から身を投げたため「乙女の塔」の名がついた、との伝説も受け継がれています。その他にもペルシア語で「キャラバンサライ」と呼ばれる、かつての遠隔地交易の隊商たちが宿泊や取引に使用した宿泊施設があります。カースム・ベクの隊商宿や、インド商人ムルターニー人や中央アジア商人ブハラ人の隊商宿跡など、地元の卸売り商人が事務所や倉庫としても使われていた場所で、かつてのバクーの繁栄がしのばれます。バクーの現代のランドマークといえば、やはり「フレームタワー」でしょう。炎の形をイメージして作られた3棟のタワーは、バクーの街どこにいても見ることができます。夜になるとそれぞれにライトアップされ、更に美しくなります。ライトアップは炎や国旗など時間と共に変化するので、しばらく眺めていても楽しむことができます。バクーに滞在するのなら、海岸線の見えるエリアをおすすめします。周辺にはインターナショナルホテルが複数あり、英語も通じるので安心です。カスピ海のバクー湾を見ながらゆったりとしたひとときが過ごせます。湾岸として栄えたバクーは、様々な文明の影響を受けながら歴史を築いてきました。多文化都市バクーは、今後も近代都市として発展が期待されます。