オーストリア - グラーツについて

グラーツはオーストリアのシュタイアーマルク州の州都で、オーストリアの中では第2の人口を誇る都市です。ムール川沿いにあり、研究者や大学生が多く居住する大学都市でもあります。グラーツの気候は冬の寒さが厳しく、夏は温かく過ごしやすいです。1年で最も寒い時期は1月で、平均の最低気温は0度を下回ります。それから冬はとても乾燥した状態が続きます。夏は暖かくなりますが、30度を越えることは滅多にありません。グラーツは自動車工業が盛んで、郊外には自動車の部品工場が多数あります。グラーツの起源は、古代ローマ時代に築かれた砦とされています。グラーツの語源はスラブ語で砦や小さな城という意味がある「グラデツ」です。中世後期からは、グラーツはハプスブルク家の支配下に置かれました。15世紀にはこの地域から輩出されたフリードリヒ3世が神聖ローマ帝国の皇帝となったことで、グラーツは神聖ローマ帝国の首都になった歴史もあります。その時代に王宮や大聖堂などが色々と築かれます。15世紀以降はオスマン帝国の侵略にさらされるようになりますが、文化的にも芸術的にも繁栄しました。フェルディナンド2世の時代には、神聖ローマ帝国の首都はウィーンに移されます。それによりグラーツの地位は低下しますが、交易の中心地であったことは間違いありません。郊外にエッゲンベルク城が建設されたのもフェルディナンド2世の時代でした。こういった歴史があり、グラーツには時代ごとに異なる建築様式をした建築物が多数残されています。伝統的な町並みの保存状態が良いので、グラーツは中央で最も完全な歴史的旧市街と呼ばれることもあります。その点が評価されて、グラーツの市街は世界遺産にも登録されているのです。グラーツの代表的な建造物には、グラーツ大聖堂・マウソレウム・武器庫（武器博物館）・王宮・エッゲンベルク城等があり、オーストリアの中でも人気の高い観光スポットとなっています。グラーツ大聖堂は、1438年から1464年にかけて宮廷聖堂として建設されました。元々はゴシック様式の建物でしたが、対抗宗教改革期に内装がバロック様式に変えられています。壁面には「災厄図」というフレスコ画が残されており、グラーツに現存する最古の絵です。マウソレウムは大聖堂の隣にある霊廟で、神聖ローマ帝国皇帝フェルディナンド2世の命令によって建設されました。ファサードの洋式は、ルネサンス様式からバロック様式へ移行する時期であることが見て取れます。これはマニエリスム様式に分類されるものです。武器庫は1642年に建てられたもので、当時としては世界最大規模を誇る武器庫でした。オスマン帝国の侵略をたびたび受けていたので、それに備えて武器を保管しておく必要があったと考えられます。現在は博物館として保存されており、守備隊の鎧や武具などが公開されています。武器博物館の建物にもマニエリスム様式の装飾がなされているので、観光スポットとしても人気です。王宮はフリードリヒ3世の居城だった建物になります。現在は州知事の官邸として利用されていますが、当時の姿のまま残されているのは1499年に建設された階段塔のみです。この階段塔には、二重の螺旋階段と呼ばれる2本の螺旋階段を組合わせた階段があります。周りながら分岐と合流を繰り返す構造になっており、ゴシック建築の逸品と呼ばれています。グラーツの街を訪れた際には、螺旋階段を上ってみるのがおすすめです。エッゲンベルク城はグラーツ市街の歴史地区からは少し離れた場所にあります。マニエリスム様式の城で、イタリア人建築家のピエトロ・デ・ポミスが手掛けました。エッゲンベルク城には4本の塔がありますが、これは4大元素を表すなど宇宙的な発想が投影されている建造物です。内部には中国風や日本風の東洋的な部屋もあるのです。エッゲンベルク城は現在、州立博物館のアルテ・ギャラリーとして一般に公開されています。ビサンティン美術から19世紀の絵画まで揃っており、日本の間には桃山文化期の屏風絵もあります。その他にもグラーツには文化的な施設が多くあり、ヨアネウムやノイエ・ギャラリー、クントハウス、オペラ座等です。ヨアネウムはオーストリア最古の博物館で、ノイエ・ギャラリーは現代美術を展示する州立博物館になります。クントハウスは2003年に建設された芸術文化施設で、オペラ座はウィーン国立歌劇場に次ぐ規模を誇るオペラハウスです。観光に訪れた際には、こういった施設に立ち寄ってみると芸術や文化を体験することができます。